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自動車業界必見!セキュリティガイドラインレベル1達成のための基本ステップ

技術革新が進み、100年に1度と言われる大変革期を迎えている自動車業界において「自工会/部工会・サイバーセキュリティガイドライン」は、サイバーセキュリティ対策を考えるうえでとても重要なものです。

そのため、自動車業界に関わる企業はその内容を理解し、適切なセキュリティ対策に取り組むことが求められます。

特に、ガイドラインのレベル1は、自動車業界におけるサイバーセキュリティの基礎となるレベルです。

本記事では、自動車業界に関わる企業がガイドラインのレベル1を達成するための基本ステップと、その中で考慮すべきポイントについて解説します。

本記事を読む前に、「自動車業界を守る!サイバーセキュリティガイドライン概要解説!」をご覧いただくと、内容をさらに深く理解する手助けになるかと思います。

また、自工会/部工会・サイバーセキュリティガイドラインの原文はこちらから確認することができます。

サイバーセキュリティガイドラインにおけるレベル1の概要と重要性

サイバーセキュリティガイドラインのレベル1は、自動車産業でのセキュリティ対策の基礎とされる初歩的なものです。

このレベルでは、外部からのサイバー攻撃に対する基本的なセキュリティ措置が定められており、自動車企業が最初に達成すべきセキュリティレベルの基準となっています。

レベル1を達成すると、サイバー脅威に対する初期的なセキュリティ体制を構築し、より高度な対策に取り掛かるための基盤が築かれます。

これにより、企業はデータ漏洩や不正アクセスのリスクを軽減し、持続可能な経営を行うことができます。

レベル1達成のための基本ステップ

では、レベル1を達成するためには、具体的にどういったことに取り組む必要があるのでしょうか。

本記事では以下の4つのプロセスについて取り上げます。

1.社内方針や体制、ルールの策定と周知

2.従業員の教育

3.技術的対策の導入

4.継続的な監視と改善

1.社内方針の策定と周知: 社内体制とセキュリティポリシーの策定と周知

企業におけるセキュリティの強化と維持を目的とした社内方針の策定と周知は、事故やインシデント※1の予防及び迅速な対応に不可欠です。

このプロセスは、全従業員が自社のセキュリティポリシーを理解し、適切に実行するための基盤を形成します。

以下は: 社内体制とセキュリティポリシーの策定と周知の流れとなります。

以下のステップを通じて、企業はセキュリティリスクに対して効果的に対応し、持続可能な安全な環境を実現するための体制を築くことができます。

※1インシデント:問題が発生してアクシデントが発生する1歩手前の状況のこと

①. ポリシーの策定

セキュリティポリシーでは、具体的なセキュリティ対策の規則や手順を設け、従業員が日常の業務中に従うべき行動規範を示します。

セキュリティポリシーを策定する際には、その目的と適用範囲を明確に定義します。

どのような情報が保護の対象であるか、どのような脅威から保護するかを具体的に示すことが肝要です。

②. 体制の構築

セキュリティの監督とポリシーの実施を指揮する責任者を明確に指名し、社内体制を構築します。

ここで注意する点は、様々な部門にまたがった多機能な組織体制とすることです

セキュリティ対策は組織全体に影響するため、IT部門だけでなく、人事、法務、経営層を含む多機能な組織にすることでより円滑に策定と羞恥を行うことができます。

③. ルールの周知と教育

策定したポリシーをすべての従業員に周知するために、入社時のオリエンテーション、定期的なセキュリティ研修、ポスターやメールでの情報提供などを行います。

ポリシーに従ってもらうために、遵守状況を定期的に監査し、違反があった場合にはその理由を調査し、再発防止策を講じます。

④. 継続的な改善

従業員からのフィードバックを積極的に求め、ポリシーの改善点を把握します。

セキュリティは常に進化するため、現状に甘んじることなく、常に更新を行い続けることが重要です。

2.従業員の教育: セキュリティ意識の向上と対応策の教育

従業員の教育は企業セキュリティ対策の基本であり、技術対策だけではカバーできない人的リスクを減らすために重要です。

教育の主な目的は、セキュリティの基本知識を共有し、日常業務における安全な行動基準を設定することです。

以下は従業員の教育の一例となります。

①. 基本的なセキュリティ知識の理解

パスワード管理、フィッシング詐欺の識別、安全なインターネット利用法など、基本的な知識を従業員に提供します。

これにより、無意識のうちにセキュリティリスクを招く行動を避けることができるようになります。

②. 定期的な研修と更新

セキュリティは常に進化しているため、最新の脅威や対策について定期的に教育を更新し、従業員に常に最前線の情報を提供することが重要です。

これは年に一度のことではなく、継続的なプロセスとして取り組むべきです。

③. 実践的な対応練習

セキュリティインシデントが発生したときの具体的な対応手順を演習を通じて学ぶことが大切です。

これにより、実際に問題が発生した場合でも冷静に適切な対応ができるようになります。

④. ポリシーと手順の周知

企業が定めるセキュリティポリシーをすべての従業員が理解し、日々の業務に活かせるよう徹底するために、具体的な行動規範や禁止事項を明確にして周知することが必要です。

⑤. フィードバックと改善の機会

セキュリティ教育は一方通行で終わるものではなく、従業員からの質問や疑問に答え、そのフィードバックをもとに教育プログラムを随時改善していくことが必要です。

セキュリティ教育を通じて、従業員一人ひとりが会社のセキュリティへの意識を強く持つことができれば、技術的対策と合わせてより強固なセキュリティ体制を築くことが可能です。

3.技術的対策の導入: 適切なセキュリティ技術とソリューションの導入

自動車産業において、サイバーセキュリティの技術的対策は、外部および内部の脅威から保護するために極めて重要です。

適切なセキュリティ技術とソリューションを導入することで、外部からのサイバー攻撃を防ぎ、内部からの情報漏洩のリスクを最小限に抑えることが可能となります。

以下はサイバーセキュリティの技術的対策の一例となります。

以下の対策を組み合わせることで、多角的にリスクを管理し、脅威から企業資産を守ることができ、継続的な経営の安全を保つことができます。

①.ファイアウォールとIDS(Intrusion Prevention System:侵入検知システム)

ファイアウォールはネットワークに不正アクセスを試みる信号やデータを遮断し、監視することで、IDSは異常な信号やデータパターンを検出し、セキュリティ対策チームに警告を発することでそれぞれ安全を確保しています。

②.暗号化技術

データの暗号化をすると、情報が外部に漏れた場合でもその内容を読み取られることがないようにすることができます。

通信データだけでなく、保存データにも暗号化を適用することが重要です。

③.アンチウイルスソフトウェア

マルウェアやウイルスからシステムを守るために必要です。

これにより、悪意のあるソフトウェアがシステム内に侵入するのを防ぎ、安全を確保することができます。

④.物理的なセキュリティ対策

サーバールームやデータセンターのセキュリティ体制の強化も重要です。

アクセス制御システムを用いることで、不正アクセスを物理的に防ぐことができます。

⑤.アクセス管理

ユーザーごとにアクセス権を厳格に管理することで、必要以上の情報へのアクセスを防ぎます。

これには多要素認証※2の導入も含まれます。

※2多要素認証「知識情報(ID、パスワード等)」「所持情報(スマートフォン、ICカード等)」、「生体情報(指紋、静脈等)」のうち、2つ以上を組み合わせて認証すること。
 ex)ATMでお金を引き出す際には「所持情報(カード)」と「知識情報(暗証番号)」の2要素が必要

4.継続的な監視と改善: セキュリティシステムの監視と定期的な見直し

セキュリティシステムの継続的な監視と改善は、自動車産業のサイバーセキュリティ戦略において中核的な役割を果たします。

このプロセスは、セキュリティ体制の有効性を保ち、新たな脅威や変化に迅速に対応するための手段を提供します。

以下はセキュリティシステムの監視方法の一例となります。

以下のような継続的な監視と定期的な見直しにより、企業はサイバーセキュリティの状況を常に最新の状態に保ち、セキュリティインシデントに対する準備を整えることができます。

①.リアルタイム監視

SOC(セキュリティオペレーションセンター)を設け、24時間365日の監視を行います。

この中で、ネットワーク上の信号やデータ、ログファイル、アラートシステムを常にチェックし、異常が見られた場合は即座に対応を開始します。

②.IDS(侵入検知システム)

ネットワークを通過するすべてのデータパケットを分析し、不審なパターンや既知の攻撃シグネチャ(ウイルスを特定・判別するために用いられるデータ)を検出します。

これにより、セキュリティ侵害の試みを早期に発見することが可能です。

③.セキュリティポリシーの更新

サイバーセキュリティ環境は絶えず変化しているため、定期的にセキュリティポリシーを見直し、必要に応じて更新します。

これは新たな脅威や技術の進展、法規制の変更があった際に行われます。

④.技術的措置の評価

使用しているセキュリティツールや防御策が最新の脅威に対して十分な効果を発揮しているかを評価します。

不足があれば新しい技術の導入を検討し、防御策を強化します。

⑤.定期的な演習とトレーニング

定期的にセキュリティ演習やトレーニングを実施し、実際のインシデント発生時の対応能力を高めます。

これにより、従業員はポリシーの実施方法を身につけ、危機管理能力を向上させることができます。

まとめ:自動車産業におけるサイバーセキュリティの重要性と基本対策

自動車産業におけるサイバーセキュリティの重要性は、技術革新とともに急速に高まっています。

「自工会/部工会・サイバーセキュリティガイドライン」のレベル1は、業界のセキュリティ基準の土台とされ、これを達成することが各企業に求められています。

達成のために本記事では4つのプロセスについて取り上げました。

これらのプロセスを達成することで基本的なセキュリティ体制を確立することが可能となるのです。